名探偵ホームズ

こんにちは

今日はあるアニメについて書きたいと思う。

タイトルは『名探偵ホームズ』。

 

※この記事はネタバレを含んでいます。コンテンツの内容をご存じでない方は

   十分ご留意の上でご覧下さい。

 

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名探偵ホームズ

作品について

本作は1984年~1985年にかけてテレビ朝日系列で放送されていたテレビアニメだ。

御厨恭輔と宮崎駿が監督を務め、他にも今では日本を代表するような様々な面子が脚本や作画に関わっている。

また、宮崎駿監督作品『風の谷のナウシカ』との併映で『青い紅玉』、『海底の財宝』が、『天空の城ラピュタ』との併映で『ミセス・ハドソン人質事件』、『ドーバー海峡の大空中戦!』がそれぞれ劇場公開された。

 

日本のテレビアニメの歴史の中でも注目すべき作品の一つということで、本作について感想を書いてみたい。

 

感想など

まず、本作はテレビアニメということもあって、一話完結型だ。そのため一話のなかで事件の起こりから敵との対決、アクションシーン、そして解決までもっていくことになる。話にもよるが、やはり30分に満たない時間中にこれだけ詰め込めるのはすごい。CMのアイキャッチが入ったところで、まだ15分しかたってなかったか、と驚くことがあったくらいだ。大雑把な議論だが、現代アニメより時間を濃密に感じることができるような気さえする。

 

本作はもちろんコナン=ドイルの『シャーロック・ホームズ』が原作だ。しかし、原作から想像される推理モノというよりも活劇が主体のストーリーといってよい。一話完結型であり、決まった敵が出てきて、毎回それを撃退するという、どちらかといえば『アンパンマン』や『ヤッターマン』的な展開である。難事件を解く爽快さというより、ホームズがどうやって敵を撃退するかというところが見どころになっている。

 

 

 

敵として登場するのがモリアーティ教授というボスと手下の2人組という『101匹わんちゃん』みたいな3人組。モリアーティ教授は確かに原作でもホームズの一番の敵なのだが、本作では、彼ら以外に敵役がほぼ出てこないので、視聴者は、見る前から犯人が分かっている状態だ。そのため、推理があったとしても、モリアーティがどうやって犯行をしたか(するか)ということが主体になり、さらに言えば、話はその後のモリアーティとの逃走劇に時間が割かれる。

 

TVアニメ『ルパン三世』のセカンドシーズンを見てもわかるように、当時、コメディタッチのドタバタアクションは宮崎駿の最も得意とするところだった。そういうわけで、特に宮崎駿が担当する回が多い前半はアクション主体の活劇になっているように見える。

 

特に個人的には、宮崎駿演出、片渕須直脚本、近藤喜文作画監督の回(つまり劇場公開された回)はやはり好きだ。これは好みの問題ではあるのだが、宮崎監督や、片淵監督のルーツを見ているような気がして嬉しくなってしまうのだ。

 

『ミセス・ハドソン人質事件』では、宮崎駿定番のロリコンが炸裂し、若き未亡人のハドソン夫人にモリアーティ教授ら敵方が魅了されるというシーンがある。これは『ラピュタ』や『紅の豚』でも出てくる、宮崎監督が大好きな展開の仕方で、もっと言えば本作より前の『未来少年コナン』や『ルパン三世 カリオストロの城』でも出ていた。ハドソン夫人が誘拐されたにもかかわらず教授たちに優しくするところとか、キャラクターの作り方がうまくて参ってしまう。

 

『青い紅玉』は原作を思わせるかっこいいタイトル。カーチェイスに次ぐカーチェイスで、ラピュタの原点ここにありという感じだ。サンドイッチや夕食のシーンなど、緩急良く進み、また、スリをやっていたホリーという女の子の描き方も短い間に生い立ちや性格がよく分かる。そして落ちも見事という、片淵須直脚本が光る名作だった。

 

ドーバー海峡の大空中戦』では、ハドソン夫人が大活躍する。それまでの話からは考えられないくらいキレキレの動きを見せるハドソン夫人に、峰不二子ナウシカの要素が入ってきてるなあと思ってしまう。さらに、この話は『紅の豚』のベースになっているように見える。ハドソン夫人はその昔、飛行機乗りたちのアイドル「ホリー」であり、パイロットと結婚したのだが、早逝されてしまう。これは完全に『紅の豚』のジーナと同じ境遇だ。しかも30分の中でものすごい数の飛行機が登場し、空中戦もやる。宮崎駿エッセンスが詰め込まれた回だった。

 

キャラクターの魅力

本作の主人公は誰なのかといわれると、実はよくわからない。もちろんタイトルの通りホームズは主人公なのだが、そこは原作やあまたの作品で描かれてきたように、スッキリとしないものがあるのである。

 

というのも、シャーロック・ホームズという人は、どこで身に着けたのかという様々な知識や技能をたくさん持っており、いつも変な実験をしている、いわゆる「変人」なのだ。魅力的な人物ではあるし、子供に善悪の分別を教える良識人ではあるのだが、本心で何を考えているのかほとんどわからない。視聴者が共感できる人物ではないのである。

 

振り切りすぎているホームズに対してバランスをとっているワトソンがいる。この人はすごく素直で、あらゆることに対して常識的な、ある意味で普通の感想を抱く人物である。視聴者の心を代弁するキャラクターだ。

 

ハドソン夫人は先に述べたように、いろいろな過去を持ちつつも、いつも家で待ってくれている、安心感を与えてくれる素敵な存在だ。

 

そして、最も魅力的な人物が、モリアーティ教授だろう。このアニメの面白さの7割はこの人によるといってもいい。まず出で立ちだが、白いマントとシルクハットに片眼鏡。白い(三世でない元祖の)ルパンのようなイメージなのだろうか。偶然かわからないが、『名探偵コナン』の怪盗キッドと完全に同じ格好である。

そして自信家の口ぶりで野心家、犯罪者として自覚的であり、プライドがある。さらに、あれだけの短期間に次々犯罪を思いつき、実行に移す行動力もあって、貧乏でも成功まであきらめない粘り強さもある。

また、彼は犯行の際、作戦の立案者であり、工作機械や基地の設計者であり、よくわからない乗り物たち(プテラノドン型飛行機やトラクター型装甲車など)のドライバーを務めることもあり、同時に建物に率先して忍び込む実行者でもあり、非常に優秀な人物なのである。

二人の部下は典型的凸凹コンビで、古き良きというか、愛すべき3人組である。

 

もちろんホームズは主人公なのだが、ぜひモリアーティにも注目して見てみてほしい。

 

まとめ

本作は宮崎駿監督をはじめとする様々な方の昔の仕事をみるにはとてもいい作品だ。ここで実力を発揮し、好きなエッセンスを詰め込み、後々の仕事につながる様々なことを実験していることを感じとれる。

本作を見ることで、のちのちの作品の見方も広がることだろう。

ジブリのアニメーションや昔のアニメーション作品群(ルパン三世世界名作劇場)などが好きな方は必見だと思う。

片淵監督ファンにもおすすめなので、まだ見ていない方はぜひ見ていただきたい。

 

 

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おしまい