最強のふたり

 

こんにちは。

今日は映画の感想を。

タイトルは『最強のふたり』(2011年、フランス)

 

  ※この記事はネタバレを含んでいます。コンテンツの内容をご存じでない方は

   十分ご留意の上でご覧下さい。

 

最強のふたり (字幕版)

最強のふたり (字幕版)

 

夜のドライブ、かっこいいオープニング ―――

ただ爆走しているからじゃない。2人の人間がいて、なにかがあったあとの

ドライブ。静かだが充実した空気が流れている。

そんな感じで始まったこの映画。

 

スッキリとしていて、だれでも楽しめる、いい映画。

決して難解ではなく、多くのことを詰め込んでいるわけではないが、

伝えたいことが明確。テーマも社会的に重要なものである。

 

始まり

ここはフランスなのか?いや、ここがフランスなのだ。

低所得者層が住む団地群。団地が並ぶ街並みは、日本によく似ている。

フランスだとここがスラムなんだなあ。

日本ではスラムっていうより、昔の公団住宅みたいなイメージだ。

治安はともかくとして。

 

サッカーのフランス代表とか見てもわかるが、フランスは昔からアフリカ系移民の

人やその子孫の人がたくさんいるんだよね。

 

ここはそんなひねりもなくフランスの下層社会的なイメージなんだろう。

スラムというか、先進国的な息苦しさだ。

失業手当目的で応募とか。介護職に応募してくる人たちの空虚な志望動機とか。

マクロンと市民の間にある溝も、こんな感じなのかなとか想像した。

 

フィリップの家はとても豪勢なお屋敷だが、風呂が分かりやすい対比に。

ドリスの家の風呂は超狭くて、しかもプライベート空間じゃない。

だから風呂付個室とかありえないって感じなんだね。

筆者は、

フランス人はどうしてあんなに広い空間にあんな小さい風呂桶を置いてしまうんだ?

とか思ったりもしたが…

日本だと、豪華な風呂というのは、材質が良くて、桶の中で足の延ばせる風呂だと

思うのだが、日本とは風呂に対する価値観や習慣が違うんだろう。

 

物語の主軸はドリスとフィリップの出会い。

そして形成される日常。

徐々にうまくいく2人。

フィリップにとってドリスがかけがえのない存在に。

やってくる別れ。

再会と、深い絆。

 

構成はそんなに珍しくない山と谷。

できればドリスが去らなければならない理由をもう少し掘り下げてもよかった

気がするが。(住み込みでなければ、フィリップの所で働くのは無理ということ

なんだろうけど、ドリスが戻って実家の環境が改善した感じが弱い)

これ、撮る人によってはもっと強弱をつけたりしそうである。

例えば2人がケンカをするとか、ドリスの家庭環境がフィリップの家に悪影響して

しまうとか。

実話に基づくので、あまり大げさにしたくなかったのかもしれない。

ここら辺はフランス的な美意識なのかなんなのか、よくわからないが…

フィリップが現代に文通をしているのも印象的で、彼はやっぱり自分に自信がもて

ないでいて、背中を押してくれる人間が必要であることを示している。

 

まあ全部話すと長くなってしまうので、以下はテーマの部分にフォーカスしてみたい。

 

テーマ

この映画で重要なテーマとは何か?

「会話」がその一つなのは間違いない。

 

人と人との重要な関係性は、十分なコミュニケーションによって生まれる。

コミュニケーションにリズムを与えるのが、日常の「会話」である。

 

2人の会話のリズムだけでこの映画は飽きさせない。

抜群にユーモアや皮肉が効いていて、普通の生活のシーンなのに

メチャクチャ楽しく感じる。

障害者と介護者との会話だから、なおさらこの明るさが重要になっている。

ただただ暗く平凡な日常になるという、ありがちな状態からの脱却だ。

本来暗いものが明るくなっているというのは、タイトル通り、まさに最強の状態。

 

だから、ドリスが去った後のフィリップの日常はどうなったか?

身の回りの介助をするお世話係は、ひとつも楽しませてくれない。

ドリスが来る前に逆戻りだ。嫌だったあの毎日が戻ってきた。

 

なぜ、障害というワードがコミュニケーションを暗くするのか?

それは、会話の相手が「障害者の方」になってしまうからだろう。

ドリスが会話している相手はフィリップなのに、他の介護者にとっては

そうじゃない。

同情心が、目を曇らせる。

障害者である以前の、個人としてのその人が見えなくなる。

 

印象的だったのが、フィリップの「ドリスは横暴だ。それがいい」みたいなセリフ。

車もこれを暗示していて、障害者用の車でしか外出しなかったフィリップを荒々しい

スポーツカーにのせるドリスは、人間的に何が楽しいのかということを何よりも優先してくれる。

身の回りの人全員から常に気を使われる状態というのが、フィリップにとってある種の

非人間的扱いなのだということが伝わってくる。

 

 

まとめ

ドリスは社会の下層にいた。だから上流階級のフィリップが

障害者でも同情しない。それが逆に2人の関係性をつくるきっかけになった。

ただ、2人の関係が深化したのは、会話である。

それがリズムになった。多くのことを前進させた。

そして会話で大事なのはユーモア。明るさこそが最強の源。

そして楽しい会話をすることは、互いを人間として認めあっている証なのである。

 

深刻にならず、気軽に見れてとてもいい気分になる映画だった。

 

追記

ドリスのおすすめがBoogie Wonderland (Earth, Wind & Fire)

なのはセンスがいい。

ハッピーフィート』でノリノリで歌ってたのを思い出すね。

 

ハッピー フィート (字幕版)

ハッピー フィート (字幕版)

 

 

 

おしまい

ありがとうございました。